夏場の倉庫や工場では、従業員が熱中症になるリスクが高く、対策が不可欠です。理由としては、広い面積や天井の高さ、熱を吸収しやすい建材など、室内温度の上昇を引き起こしやすくなる施設特有の構造が考えられます。この記事では、倉庫や工場で熱中症が発生しやすい理由についてくわしく解説します。
工場・倉庫で熱中症が発生しやすい理由
暑い時期に倉庫や工場で働く従業員は、熱中症に十分に気をつけなければなりません。工場や倉庫には、熱中症になりやすいさまざまな理由があるからです。
熱を溜めやすい
工場や倉庫は、建物自体が熱を溜め込みやすい構造であることが要因のひとつです。多くの倉庫や工場では、コンクリートが主要な建材として使われていますが、コンクリートは熱を蓄えやすく、熱伝導率が高いのが特徴です。よって、床や壁にたまった熱が室内全体に伝わりやすく、結果として室内温度が上昇し、熱中症につながります。
同様に、工場や倉庫の屋根に使用される鉄も、直射日光を浴びることで高温になり、それが伝わって室温上昇が加速します。このような輻射熱の影響も、冷房の効果を減少させ、室内温度をさらに高くする原因のひとつです。
冷房が効きにくい
工場や倉庫のような大規模な施設では、換気場所の不足や空気の流れが悪く、換気が不十分な傾向があります。さらに機械の稼働によって追加の熱が発生するため、機械の近くではとくに温度が上がりやすくなります。
従業員は機械の近くで作業することが多いため、熱がこもった環境で長時間作業を続けなければなりません。このことにより、熱中症のリスクが大幅に増加するのです。
また、工場や倉庫は一般的に敷地面積が広く、天井も高いため、冷房で冷やされた冷気は広く拡散してしまいます。エアコンが利きづらい構造であることも、熱中症を誘発する原因のひとつです。
職場の暑さは従業員の作業効率を下げる
暑さが職場環境に与える影響は、従業員の健康状態の悪化にとどまらず、作業効率にも大きく影響します。暑さが与える具体的な影響について考えてみましょう。
集中力の低下
暑さは、従業員の集中力を大きく削ぎます。人間が快適に活動できる温度は、夏場は25〜28度程度とされており、それを超えると体温が上昇し、意識がもうろうとしてきます。この状態では、思考が鈍り、通常の作業においても判断力や反応速度が遅くなるため、作業の効率が大きく低下します。
さらに、集中力が低下することでミスも増え、普段はしないような単純な間違いも発生するでしょう。さらに、集中力の低下により、事故やケガのリスクが増加する恐れがあり、安全管理のリスクが高く、危険な職場になってしまう可能性があります。
疲労が蓄積する
暑さは、疲労を蓄積させます。気温が高い中での作業は、体力を急速に消耗させ、疲労感が強まります。また、暑さは食欲不振や無気力感といった症状を引き起こしやすく、これがさらに疲労感を悪化させます。
長期間にわたり疲労が蓄積することで、病気になる可能性もあり、貴重な従業員が離れていく引き金にもなるでしょう。熱中症対策を放置すると、従業員の健康増進という、使用者の義務も果たせず、安定的な雇用がむずかしくなる可能性があります。
工場・倉庫におすすめの暑さ対策を紹介
工場や倉庫の暑さ対策は、従業員の安全と作業効率を確保するために欠かせません。ここでは、工場や倉庫で有効な暑さ対策を紹介します。
スポットエアコン
スポットエアコンの導入は、非常に効果的です。工場や倉庫のような広い施設では、全体を均一に冷やすことはむずかしいため、特定の場所を集中して冷やすスポットエアコンが活躍します。
作業員がいるエリアや、機械熱が集まりやすい場所に設置することで、効率的な冷却が可能です。キャスター付きのタイプであれば移動がかんたんで、必要な場所にすぐに配置できます。
遮熱塗料を塗る
太陽光を反射して建物の表面温度を上がりにくくする、遮熱塗料の使用も大変有効です。屋根に塗布することで、直射日光による熱の侵入を防げます。遮熱塗料の施工は、定期的なメンテナンスも少なく、継続的な効果が期待できるため、コストパフォーマンスにもすぐれた対策です。
吸排気フードの設置
吸排気フードの設置も効果的です。吸排気フードは、室内にこもった熱や湯気などを吸い込み、外部に排出する装置です。厨房の換気扇のような役割を果たす設備であり、熱気を効果的に排出することで、室内の温度上昇を抑えられます。
空気の流れが滞りやすい場所に設置することで、全体の換気効果が向上し、快適な作業環境を維持できるでしょう。設置には一定のコストがかかりますが、室内温度を下げ、作業効率の向上や従業員の健康維持にもつながるため、長期的な視点で見れば非常に有益な投資といえるでしょう。
まとめ
倉庫や工場で熱中症が発生しやすいのは、建物の構造や内部の換気が不足することがおもな原因です。コンクリートや金属製の建材は熱を吸収しやすく、内部に熱をため込みます。また、作業にともなう機械の稼働や換気の不足が、温度上昇を促進します。これらの要素が重なり、従業員は高温環境で作業せざるを得なくなり、熱中症のリスクが増大するのです。従業員の安全と健康を守り、業務遂行を効率的に進めるには、冷却システムの導入などの対策が欠かせません。